ずいぶん前から思っていたことがある。
『ジョジョの奇妙な冒険』の5部に出てくる登場人物の一人に、ブローノ・ブチャラティという最高にイカすやつがいる。
あいつのスタンド(要は特殊能力)も最高にイカす。そのカッコよさをここで絵つきで紹介することができないので、ぜひ以下のサイトで確認してほしい。小学生の時にした妄想のザ・具現形である。
そしてこの超イカす奴の必殺技が「とりあえずたくさん殴る」というものだ。イカす。
最後は結局物理的な攻撃に終始するところが最高にイカす。
そして彼はその必殺技(ザ・タコ殴り)を放つ際にこういうのである。
ちなみに動画もつけておこう。
アリアリアリアリアリーヴェデルチ!!
これはイカさない。最高にイカさない。彼にはぜひ反省してほしい。
まず、「アリーヴェデルチ」は間違いなくイタリア語の「さようなら」を意味する"arrivederci(アリーヴェデルチ)"からきている。そう"arrivederci(さよなら)"だ。
彼はこれを「アリアリアリアリアリーヴェデルチ」と言うわけである。
違う。形態素解析(要はことばをパーツに分けること)がなってない。
"arrivederci"は以下のような形態素(要はパーツ)に分けられる。
"a"-英語の"to"みたいなやつ。後ろに動詞の原形がくる。
"ri"-「再び」という意味を表す接頭辞。要は何かにくっついて「もっかい!」という意味を表す。
"vedere"-「見る」
"ci"-「私たち」という意味の接辞代名詞。要は何かにくっつく代名詞。
というわけでカタカナで表記すると「ア」「リ」「ヴェデーレ」「チ」となるわけである。
ちなみに「チ(私たち)」がつくと「ヴェデーレ」の最後の母音の"e"が落ちるので「ヴェデール」となる。
私が気にくわないのは、"ri"というのが"vedere"とくっついていなければいけないのに、これを分離して、されにその前の"a"にくっつけている点である。
イタリア人は絶対こんな区切り方をしない。
天に、キリストに誓ってありえない。
さて、これを踏まえて、新しいブチャラティ氏の必殺技を考え直そう。
1.もう全部わけちゃう。
ア、リ、ヴェデーレ、チ!!!
これで文句なしだ。
あいつちゃんと形態素解析(パーツ分け)ができてるな!となって第二外国語の成績はA判定。
2.ヴェデルチは一緒にする。
アー、リー、ヴェデルチ!!
これもいい。なぜならそもそも「チ」は何かにくっついてなければいけないやつだから。
お、こいつ、むやみに形態素解析しないでちゃんと考えてるな、となる。
3.リヴェデルチは一緒にする。
アー、リヴェデルチ!!
これもいい。だって「リ」も何かにくっついていなければいけないやつだから。
それに、「ああ、あのリヴェデルチね」みたいな感じがして納得がいった感じにも聞こえる。
素晴らしい。なんか間抜けな感じもして、なおいい。
4.もう分けない。
アリーヴェデルチ!!
これもいい。そもそも"arrivederci"は「さようなら」という定型句(要はまとまって一つになってるやつ)だ。
「さようなら」が「さよう」「なら」でできてるからといって、誰がそこで分けようか。したがって、これもいい。最高だ。
しかしここまで挙げた可能性には重大な欠点がある。
このままでは大変殴りにくい。
ということである。やはりどこかはリピートしたい。そこで第五の選択肢である。
5.「ア」だけ分けて繰り返す。
アッ、アッ、アッ、アッ、アリーヴェデルチ!!
これが正解である。「ア」は何かにくっついていなくてもいい。
「ア・リヴェーデルチ」が本来の形。定型句の一部を繰り返すのは野暮だけど、ブチャラティがこれで相手を殴りたいというのだから仕方ない。
「ア」を繰り返すということで手を打とう。
これは烏賊す。言語学畑の人間にも配慮したブチャラティ。最高だ。
いかがだっただろうか。いかに「アリアリアリアリ」と繰り返すのが言語学的に無意味であることがわかっていただけただろうか。
ちなみに、「アリーヴェデルチ」は語源的にも用法的にも「もう一回会えることを強く願って」の「さようなら」なので、そこも間違い。
できれば"addio(アッディーオ)"といってほしい。
arrivedérci in Vocabolario - Treccani
それでは、私の気も晴れたので、みなさん、あっあっあぅあぅありーゔぇでるちぃ!!↓*1
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*1:イラストはHittonさんからのもらいもの