皆さんは、ジョジョっていうマンガを知っていますか?
ジョジョの奇妙な冒険 第5部 モノクロ版 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)
- 作者: 荒木飛呂彦
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2012/09/07
- メディア: Kindle版
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スタンド(特殊能力)を持った登場人物たちが、それぞれの正義を胸にたくさんの敵に立ち向かっていく、 そんなお話です。
ジョジョは、いわゆるシリーズ物で、主人公が変わるたびに第1部、第2部、第3部...と区切りられています。まあ、シリーズを通してぼんやりとはつながっているのですが、それぞれの話は、きちんと独立しています。
さて、そんなジョジョの第5部は、イタリアを舞台としています。したがって、多くのイタリア語が出てきます。しかも、いい加減なイタリア語ではなくて、結構的確なイタリア語です。
そう、イタリアにかなりどっぷりと浸かっているのが第5部なのです。
筆者自身も語っていますが、イタリア語関連で有名な話は、第五部の主人公であるジョルノ・ジョバーナのつづりの話です。
マンガのタイトル「ジョジョ」は、主人公の愛称です。第一部から第三部の主人公の名前は、ジョナサン・ジョースター、ジョセフ・ジョースター、空条承太郎...みな、必ず、「ジョ」の音が二つはいっており、ここから、「ジョジョ」となります。そして、当然と言ってもいいのですが、これはJOJOと表記されてきました。
しかし、イタリア語では、アルファベットを使うことは使うのですが、jがなく、いわゆるjの音は、giを使って表記します。なので、第五部の主人公であるジョルノ・ジョバーナ、通称「ジョジョ」のつづりは、Giorno, Giovannaで、GIOGIO(ジョジョ)と表記されます。*1。こういうきめ細かな点まで配慮されているのです。
そんなイタリアにどっぷり浸かったジョジョ第5部は、主人公の仲間たちも当然イタリア語を使います。中でも、ブローノ・ブチャラティとナランチャ・ギルガは、敵を倒すときにイタリア語を叫びます。
ブチャラティは、
アリアリアリアリ、アリーヴェデルチ!
ナランチャは、
ボラボラボラボラ、ボラーレヴィーア!
で、それぞれ、arrivederci(アリーヴェデルチ)「さよなら」と、volare via(ボラーレヴィーア)「飛んでいく」からきています。で、なぜ最初に繰り返しが入るかというと、この部分で相手をタコ殴り(または猛攻撃)をするからです。
そんな中、ジョルノは何と叫ぶかというと、
無駄無駄無駄無駄、無駄ぁ!
で、何と日本語です。まあ、これには理由があるわけですが、私としては、せっかくですから、ジョルノにもイタリア語でこれを叫んでほしいです。
ということで、私が、彼のために、イタリア語版の「無駄無駄」を考えることにします。
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まず、思いつくのは、inutile(イヌーティレ)「無駄な」という形容詞です。これを使って、こうするのはどうでしょう。
イヌイヌイヌイヌ、イヌーティレ!
おかしい。これは絶対におかしいです。
お気づきのように、ジョジョの登場人物たちは、2拍(アリとかボラとか)を繰り返した後、イタリア語を叫びます。つまり、イタリア語表現の最初の二文字*2を繰り返し、そこからの、えいやっ!、です。これを仮に「ジョジョ必殺技の法則」と呼ばせて下さい。
ジョジョ必殺技の法則(informal)
ジョジョの必殺技は、必ず、あるイタリア語表現の先頭2拍相当の音を繰り返した後に、当該のイタリア語表現を叫ぶ構造になっている。
したがって、仮に、ジョルノの必殺技にイヌーティレ(無駄な)を使おうとすると、イヌイヌイヌ、となってしまい、なんだかとってもおかしくなってしまいます。犬ーティレになっちゃいます。
そして、もっと言うと、イヌーティレを、イヌとティレに分けることに大変な違和感を感じます。
inutileは、in(イン:否定の接頭辞)とutile(ウーティレ:有益な)が一緒になって言葉で、これで「無駄な」という意味です。これを一緒に発音すると、inのnとutileのuが一緒になって「ヌ」となります。
ですから、イヌできってしまうと、inu-tileになってしまって、これは分け方としてはおかしいです。
よくわからない方もいらっしゃると思うので、卑近な例で説明させてください。
皆さん、「のりしお」はご存知ですか。そう、あの「のりしお」です。
ここで、「のりしお」という言葉を二つに分けて下さい、と言われたら、どうします?
そんなこと生涯で一度も考えたことないと思うのですが、きっとすべての人が、「のり」と「しお」で分けると思います。
「の・りしお」でも「のりし・お」でもないわけです。日本語母語話者にとってはしごく当たり前なのです。
では、イヌーティレを、「イヌ・ティレ」と分けてしまうとどうなるか。感覚としては、「のりし・お」です。
気持ち悪いですよね。イタリア人が「ポテトチップスのりし・お味が好きなんだよね〜」と言ってきたら、皆さん、間違いなく、「いやいや、のり・しおだから」って訂正しますよね。
つまり、みなさんが「イヌ・ティレ」と言ったら、それは、イタリア人にとっては、「のりし・お」と言われているのと同義なのです。
要するに、「のりし・お」=「イヌ・ティレ」なのです。
意味がわからなくなったので、話を戻します。ジョルノの必殺技を、イヌーティレを使って訳すことはできないというお話でした。
そこで、私が提案したいのは、non ha senso(ノナセンソ)「無駄」です。 英語にすると、it has no senseで、要するに、「意味がない」「無駄」という意味です。
ここでのポイントは、non ha sensoは、3つのパーツに分かれていること、そして、イタリア語ではhは発音しませんから、2つ目のhaは「ア」と発音して、前のnonのnといっしょになって、「ナ」となる、ということです。つまり、「ノン・ア・センソ」と発音せずに、「ノナ・センソ」と発音することになります。
そしてさらに、ノナとセンソは分けても大丈夫です。
するとどうでしょう。ノナは、分離できると同時に二つの音ですから、ジョジョ必殺技の法則になじみます。ここで、ジョジョ必殺技の法則を以下に再掲しておきます。
ジョジョ必殺技の法則(informal)
ジョジョの必殺技は、必ず、あるイタリア語表現の先頭2拍相当の音を繰り返した後に、当該のイタリア語表現を叫ぶ構造になっている。
ですから、ジョルノの必殺技はこうなります。
ノナノナノナノナ、ノナセンソ!
いかがでしょうか。
きたでしょう? これは?
ノナノナノナからの、ノナセンソ!、です。「無駄無駄無駄」のイタリア語版の完成です。
さて、ジョジョは、最初の部分で相手をタコ殴りにしなければなりません。つまり、無駄無駄無駄で相手をリズムよく殴っていたように、ノナノナノナで相手を殴ることになります。
それでは、皆さん、りぴーとあふたーみー。
ノナノナノナノナノナドアドダッ!...っ...のませんそ!!!
ね? かむでしょ?
みなさん、
そういうことですよ(?)
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