イタリアには、ニョッキというじゃがいもベースのやわらかい団子のパスタがある。日本でも、カルディなんかで買えるので知っている人もいるかもしれない。
最近、妻がニョッキのパスタを作ってくれた。ニョッキをトマトソースで絡めた、いたってシンプルな、イタリア人が作る、本場のニョッキ料理だ。

いたってシンプルでありながら、口当たりが好く、味もどこか懐かしい感じがして、次の一口をスプーンですくって食べるのが待ち切れないといった、芳醇な香り漂う、絶品料理だ。
いや、流石に絶品料理はウソ。ただ、芳醇な香りが漂うも誇張。
いやでも、次の一口が待ち切れないというのは言ってもウソだけど、懐かしい感じというのは間違い。
ごめん、でも流石に口当たりがいいというのはウソ。全部ウソ。
驚嘆のまずさ。

じゃがいもと小麦粉を可愛らしく団子にした、見目もいいパスタ。美味しくないわけがないような見た目をしていながら、なんかまずい。特段、まずい理由がなさそうなのに、なんかまずい。
あいつらは、「私、美味しいですよ」という顔をしているくせに、まずい。一口目からまずい。びっくりする。
「あ、びっくりさせちゃいました?二口目は美味しいですよ」と訴えかけてくるくせに、二口目もまずい。一口目と一切変わらず、まずい。
見た目からの裏切り、落差、これらがひどい。トマトソースがもったいない。トマトソースだけすすらせてほしい。
なんともいえない食感が、絶妙に中途半端。団子を食べているのか、じゃがいもを食べているのか分からない。非常に曖昧な存在。
しかも、なぜかよくわからないが、若干酸っぱい後味が残る。意味がわからない。
じゃがいもがゆえに、腹持ちが良く、ささっと食べた後に別のものを食べて口のなかの風味を入れ替えることも叶わない。口直しをする余地を与えない。キャンセル不可。確定演出。
しかもしかもだ。ニョッキは、イタリア語で gnocchi と書く。gnで「ニ」と読ませて、cchi で「ッキ」と読ませてくる。イタリア語初心者が最も嫌がるつづりだ。勘弁してくれ。
ニョッキなんて贅沢な名前だよ。
今日からお前のことを、グノッチと呼ぶわ。
グノッチ。これなら美味しくなさそう。可愛げもない。いいね。これでいこう。
いや、でも最後に一口だけ。流石に...ね。ちょっと言い過ぎたかもしれないしね。
はい、残念! やっぱねっちょりしたじゃがいもでした!解散!