皆さんは、「バンビーノ」というマンガをご存知だろうか。
どういうマンガなのかを、もうごくごく簡単に言ってしまうと、主人公がいろいろな苦楽を経ながら一流のイタリアンコックを目指す物語、そんなカンジである。
このマンガには、イタリアに関するマンガということもあって、たくさんのイタリア語が登場する。
そもそもそのタイトル「バンビーノ」もイタリア語である。バンビーノはイタリア語で、「子ども」という意味である。
「お前はバンビーノだな」なんていうと、「お前はまだまだあまちゃんだな」のような意味になるので、要は、主人公があまちゃんから成長していくという意味をこめてもあるのだろう。
さて、私は別にこのマンガが面白いよ、とかいう当たり障りのない当たり前のことを言いたいのではなくて、このマンガに出てくるイタリア語で当惑したことがある。
なので、ちょっとそのイタリア語について書いてみたいと思う。
主人公はある六本木にあるイタリアンのレストランで修行を始めるのだが、そこは、超体育会系で、めちゃくちゃに叫び、そして雄叫びをあげ、ゴリゴリと繊細な料理を作っていくというレストランである。
主人公も、当然、最初はそのノリに大変ビックリするわけであるが、それもそのはず、しょっぱなからオーナーシェフが、雄叫びを上げるのである。
その雄叫びがこんなカンジ。
Allora ragazzi, cominciamo a lavorare!
アッローラ ラガッツィ コミンチャーモ ア ラボラーレ
「さあ、てめえら、仕事を始めようぜ!」
allora(アッローラ)が「さあ」とか「じゃあ」という意味で、ragazzi(ラガッツィ)がここでは「お前ら」くらいの意味、そして、cominciamo a lavorare(コミンチャーモ ア ラボラーレ)が「仕事をし始める」という意味なので、概略、「さあ、てめえら、仕事を始めようぜ!」という意味になるわけである。
そして、この叫びを受けたシェフたちは、si, va bene!(了解した!)と応え、
Accendere!!!!
アッチェンデレ
「点火!!」
と、叫びながら一斉に厨房で火をつける。
なんとたくましく雄々しい場面であろうか。
私が気になるイタリア語とは、この accendere だ。
私は、最初、この accendere をそのままの形で命令として使うことが気になって気になってしかたがなかった。
ふつうは、accendere の命令法(現在)は以下のような形になるからだ。
あなた | accendi |
あなた(尊敬) | accenda |
わたしたち | accendiamo |
あなたたち | acendete |
かれらたち | acccendano |
だから、この厨房でみんなが叫ぶ場合は、自分たちが一緒にやる、ということだから、accendiamo が妥当なのではないかとずっと考えていた。
しかし、この場合の accendere は結構自然なのではないか、という指摘をいただき、イタリア人のEさんに聞いてみたところ、文脈によっては自然になるとのことだった。
普通は使わないのだけれども、例えば、戦場などで強く叫びながら命令を下すときなどに使うらしい。
日本語で、「火をつける」を「火をつける!!!」とどんなに力んで言っても命令にはならないが、「点火!」などであれば、命令になる。そして使える文脈は、確かに「戦場」のような、たぎった場面に限られるような気がする。
となると、バンビーノのこのイタリア語は、大変文脈に沿ったものである、ということになる。 こういったイタリア語にも、厨房が戦場であるという感覚が表現されているのは非常に面白い。
ずっと頭の片隅でひっかかっていた悩みだったが、無事解決した。
よかったよかった。
さて、こうなると、次の悩みが出てきた。こういう真面目な記事では終わり方が、全然わからないのだ。
うーん、とりあえず
つづく(つづかない)
点火しそうな爆弾を持って慌てるおうまさん↓