ITAMINKIA

イタミンキアです。おうまさんが運営する実用イタリア語検定試験完全非対応のイタリアブログです。

イタリアの失恋ソングを紹介したい

皆さんは、女々しい男は好きですか。何を隠そう私は大変女々しいです

 

 

皆さんはこんな言葉を聞いたことがありますか

 

男性は『名前を付けて保存』、女性は『上書き保存』

 

ネット界隈でよくみます。初出を知りたいですがよくわかりません 

 

 

要は、男性は別れた恋人一人ひとりの思い出をいつまでも忘れられず、女性は過去を忘れて今の恋人を大切にするということらしいです。

 

 

 

女々しい私には、なんかこう、つきささるものがあります

 

 

 

今回は、そんな男性の恋愛観『名前を付けて保存』を地でいく曲、Zero Assoluto「Per Dimenticare」を紹介します

 

イタリアのことがわからない方でも楽しめるように解説しますので、まずは動画をご覧ください

 

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歌詞と意訳

 

Per Dimenticare

忘れるため

 


Zero Assoluto - Per Dimenticare (Official Video)

 

 

Allora quindi è vero
è vero che ti sposerai

じゃあ本当なんだね

君は本当に結婚するんだね

 

Ti faccio tanti, tanti cari auguri
Se non vengo capirai

心から祝福するよ

もし(結婚式に)行かなかったら、わかるよね?

 

E se la scelta è questa
è giusta lo sai solo tu

これが君の選択なら

それが正しいかどうかは君だけが知ってる

 

E' lui l'uomo perfetto che volevi
Che non vuoi cambiare più

彼が完璧な、君が欲しかった男で

君がもう変えたくない男なんだね

 

Ti senti pronta a cambiare vita
君は人生を変える準備はできているかい?

 

A cambiare casa
A fare la spesa
A fare i conti a fine mese
Alla casa al mare
Ad avere un figlio e un cane

家をかえたり

買い物に行ったり

家計をやり繰りしたり

海の近い家で過ごしたり

家族をつくったり、犬を飼ったり

 

Ed affrontare suocera, cognato
Nipoti, parenti
Tombola a Natale

義理の母、兄

いとこ、親類

クリスマスのトンボラ

これらに向かい合うことに

 

Mal di testa ricorrenti
E tutto questo
Per amore?

終わらない悩みごと

これら全てを

愛のために?

 

E forse partirò
Per dimenticare

僕はいなくなろうと思う

忘れるために


Per dimenticarti

君を忘れるために

 

E forse partirò
Per dimenticare

僕は居なくなろうと思う

忘れるために


Per dimenticarmi...di te, di te, di te

君のことを忘れるために

 

E grazie per l'invito
Ma proprio non ce la farò

(結婚式への)招待、ありがとう

でもどうしたって無理だよ


Ho proprio tanti, tanti, troppi impegni
E credo forse partirò

僕は本当にとっても忙しいし

もう居なくなるだろうから


Se avessi più coraggio
Quello che io ti direi

もし僕にもっと勇気があれば

君に伝えられるのに


Che quell'uomo perfetto
Che volevi tu non l'hai capito mai.

君は自分が求めていた理想の男性を

一度も理解していなかったということを


Io sarei pronto a cambiare vita

僕は人生を変える準備はできていたよ

 

A cambiare casa
A fare la spesa
E fare i conti a fine mese
Alla casa al mare
Ad avere un figlio, un cane

家をかえたり

買い物に行ったり

家計をやり繰りしたり

海の近い家で過ごしたり

家族をつくったり、犬を飼ったり


Ed affrontare suocera, cognato
Nipoti, parenti,
Tombola a Natale

義理の母、兄

いとこ、親類

クリスマスのトンボラ

これらに向き合うことに

 

Mal di testa ricorrenti
E tutto questo
Per amore

終わらない悩みごと

これら全てを

愛のために

 

E forse partirò
Per dimenticare
Per dimenticarti

居なくなろうと思う

君を忘れるために

君のことを忘れるために

 

 

 

 

解説

この歌は、ある女性に振られた男性が、頭のなかでいろいろな考えを巡らせている、と捉えるととても理解しやすくなります 

 

この男の人が愛していた女性は、別の男の人を見つけてこれから結婚するところです

 

grazie per l'invito

招待ありがとう

 

 

 

Ti faccio tanti, tanti cari auguri
Se non vengo capirai

心から祝福するよ

もし(結婚式に)行かなかったら、わかるよね?

 

 

というところからそれが伝わってきます

 

結婚式の招待状を受け取って、彼女を巡るいろいろな思いが頭のなかを駆け巡っているという感じです

 

 

この歌に二回あるサビの部分は対照的になっていて、どちらもほとんど歌詞は同じなのですが、最初の部分が以下のように異なっていて、

 

Ti senti pronta a cambiare vita
君は人生を変える準備はできているかい?

 

Io sarei pronto a cambiare vita

僕は人生を変える準備ができていたよ

 

 

何に準備ができているか、というところで以下のようにたたみかけます

 

A cambiare casa
A fare la spesa
A fare i conti a fine mese
Alla casa al mare
Ad avere un figlio e un cane

家をかえたり

買い物に行ったり

家計をやり繰りしたり

海の近い家で過ごしたり

家族をつくったり、犬を飼ったり

 

Ed affrontare suocera, cognato
Nipoti, parenti,
Tombola a Natale

義理の母、兄

いとこ、親類

クリスマスのトンボラ

これらに向き合うことに

 

 

誰かと結婚するということは、「家を変えること」であり、独身のときにはあまりしなかった「買い物を誰かのためにする」ということで、「家計をやりくりする」ということであり、「海の近くの家を借りたり場合によっては買ったりする」ことであり、「家族をつくること、犬を飼うこと」であり、「親類と向き合い、クリスマスにはトンボラをすること」である、と言っているのです

 

日本人にはわかりづらいところもあるかと思うので少し補足説明をすると、イタリア人にとって海は人生の一部で、特に夏になるとバカンスといって海の近くの家(別荘)で過ごすことが多いです。ですのでこの歌では「海沿いの家(casa al mare)」ということばが出てきます

 

また、トンボラとはイタリア人がクリスマスのときに家族や友人と集まって興じる数字合わせゲームです。ビンゴみたいなものです。家族が出来るということはこういうゲームをクリスマスにするということなんだ、と言っているわけですね

 

こういったことへの準備があなたにはできているかい?と問うて、相手へのある意味での心遣いを見せる一方で、自分はその準備が出来ていたんだ、ということで相手への愛の深さを語っているわけです。元恋人への複雑な思いが頭の中でぐるぐると回っているといったところでしょう

 

恋人への複雑な思いというのは、以下からよく伝わってきます

 

Se avessi più coraggio
Quello che io ti direi

もし僕にもっと勇気があれば

君に伝えられるのに


Che quell'uomo perfetto
Che volevi tu non l'hai capito mai.

君は自分が求めていた理想の男性を

一度も理解していなかったということを

 

 

振られた相手への恨みつらみが爆発するところです。相手への気遣いと恨みが頭の中でごっちゃごちゃ、そんな状況から逃げたいから

 

E forse partirò
Per dimenticare

僕はいなくなろうと思う

忘れるために

 

となるのでしょう

 

 

 

さて、この歌は(というかzero assolutoの歌が全般的に)、リスニングがしやすく、言っていることも難しくなく理解しやすいので、イタリア語初級者に優しく、勉強になります

 

この歌には一つ文法的なポイントがあります。この歌には、

 

Per dimenticarti
君を忘れるために

Per dimenticarmi...di te, di te, di te
君のことを忘れるために..

 

というdimenticarti(君を忘れる)と、dimenticarmi di te(君のことを忘れる)という日本語にしてしまうと違いがほとんどわからない、二つのdimenticareが出てきます

 

簡単に言ってしまうと、dimenticartiのtiは、「君を忘れる」の「君を」にあたり、それがdimenticareとくっついています。この「君を」は、dimenticarmi di teのdi teの部分にあたり、この場合のmiは再帰代名詞でこれがdimenticareとくっついています

dimenticareは他動詞で、dimenticarmiは再起動詞(ここでは主語が私という一人称なので、それに応じてmiという形になっていますが、いわゆる辞書のかたち(不定形)はdimenticarsi)なのです。こうした違いがイタリア語にはたくさんあって、これらの文法はイタリア語初級者を惑わせます。というか私もいまだにしょっちゅう迷いますし、間違えます

 

この二つには意味(用法)の違いもあって、簡単に言ってしまうと、

 

dimenticare「君を忘れる」という感じで、dimenticarsiは「君のことを忘れる」

 

という感じです。要は、dimenticareは「鍵を忘れた」「傘を忘れた」みたいなモノにも使えるのですが、dimenticarsiは心理的な場合に使えて、「鍵」とか「傘」には使えません*1。すなわちdimenticarsiのほうが心理的であることが強く出るということです。まあ、この歌ではそこまでの違いはなくて、音合わせみたいなものでしょうが

 

 

 

 

 

 

 

ということで、まじめな記事を書いていたら疲れたので、ここらで居なくなろうと思いますね

 

 

 

 

では

 

 

*1:日本語の目的語につく「[名詞]を」と「[名詞]のことを」にも似たような制約があります。