いつもどおりの夕暮れ、いつもどおり仕事をサボっていたところ、とある悪友から以下のようなメッセージが送られてきた。
何の前置きもなく、"Tira più un pelo di fica che un carro di buoi"っていうことわざを知っていますか、である。
知らん。全然知らん。かろうじて分かるのはイタリア語であるということと、fica(女◯器)という不穏な語彙が入っているということだけである。
しかしそれだけでこのしょうもない質問を一蹴するには十分である。悪友の彼はこちらが動揺するのを待っているのだ。「女◯器♡」とはしたなく言いたいだけなのだ。不穏であることが分かりさえすれば、「知らん、興味もない」で済むのだ。これで圧倒的勝利なのだ。
彼はこちらが赤面し、狼狽え、まごつく姿を想像して楽しんでいるだけなのだ。なんってったって、私は自他ともに認める紳士であるからだ。紳士であり、真摯なのだ。
ということで、申し訳ないが、「私は、このことわざを、知らん」の一言で一蹴させて頂く。
私は、このことわざを、知らん!
ので、徹底解説します!!!
Tira più un pelo di fica che un carro di buoi とは
まず、紳士たるもの、知らんイタリア語が出てきたらまずGoogle検索である。検索もできます。そう、グーグルならね!
すると以下のようなサイトがヒットするのである。
意味
そして、意味としては、以下のように説明されている。
Il detto sta a significare che l'uomo è capace di tutto tranne a resistere al fascino di una donna e che quest'ultima sia in grado di far muovere gli uomini più di quanto possa fare un carro trainato da cento buoi. Questo perché il sesso è da sempre stato un importante motivatore per le azioni di qualcuno. Quindi il potere seduttivo femminile è, per gli uomini, tale da permettere alle donne di ottenere da loro tutto ciò che vogliono.
全部訳すのがめんどいので、簡単に言ってしまうと、要は、「男の人ってのは女性のエッチな魅惑には勝てないのさ」という意味である。
文法
さて、次に、"Tira più un pelo di fica che un carro di buoi"の文法である。Tiraは"tirare"「引っ張る」の三人称単数形。主語は後ろに出てきている"un pelo di fica"「女◯器の毛」である。つまり、「女◯器の毛は引っ張る」である。"tira"のあとに"più"もあるので、「女◯器の毛はより強く引っ張る」ということである。
なにを引っ張るのかという目的語がないが、ここは「男全般」が省略されていると考えられる。したがって、「女◯器の毛は男をより強く引っ張る」となる。
「より強く」と言っているので比較対象が必要だ。比較対象は"che"以下の"un carro di buoi"である。これは、牛が引っ張る牛車である。しかも"buoi"で"bue"「牛」の複数形である。
以上を踏まえると、「女◯器の毛は男を牛が引っ張る牛車より強く引っ張る」である。
用法
上記のサイトには以下のように書いてある。
In genere viene usato quando ci si trova dinnanzi a una donna dal fascino irresistibile e tutte le persone si girano per ammirarla, quando un momento prima erano concentrati in tutt'altri affari. Oppure viene usato quando l'amore verso una donna si mette in mezzo a un'amicizia, o anche semplicemente per scherzare.
適当に訳すと、人々が振り返り見てしまうようなとっても魅力的な女性がいたときや、女性への愛によって友情関係を妨げてしまうような、そんなときに使うお、とある。
もっと言うと
上記のサイトによると、"Tira più un pelo di fica in salita che un carro di buoi in discesa."「上り坂の女◯器の毛は男を、下り坂の牛が引っ張る牛車より強く引っ張る」という、フルバージョンまであるという。どうてもよすぎる。
イタリア語はそれなりに勉強してきたつもりだったが、まだまだイタリア語の世界は深かったようだ。紳士たるもの、真摯にイタリア語に向き合うべきだとあたらめて思い知らされた、そんな出来事だった。
紳士からは以上なのだ!
追伸
まあ、ちょっと茶化しまして書いてしまいましたけど、あんまり使って良い表現ではなさそうですね。女性と性を結びつけた考え方がことわざになっているというのは、社会的な何かを反映していると考えるべきで、明らかに良くないと思います。やはり今後はこういうことわざはNGとして、使わないことが求められると思います。