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イタミンキアです。おうまさんが運営する実用イタリア語検定試験完全非対応のイタリアブログです。

自転車競技素人が今さらリオ五輪ロードレースを語る

 

イタリアで盛んなスポーツといえば、何だと思いますか。多くの人はまず、サッカー(カルチョ)を挙げるでしょう。では、その次に人気なスポーツといえば、何でしょうか。これが案外ぱっと出てこないと思うのですが、自転車競技です。

ここで私が意図している自転車競技とは、ロードレースと呼ばれるもので、屋外をロードバイクと呼ばれる自転車で走り続けるやつです。10km、20kmとかいう距離ではなく、100km、時には300kmくらい走り続けるやつです。

 

私は昔、ロードレースと関わりのあるスポーツをしていたので、自転車競技について全くの無知ということはないのですが、自転車競技そのものには全く興味がありませんでした。かつてイタリアに留学するときに、周りの人から、「え、イタリア行くの?じゃあ、自転車レースが生で見れるじゃん、羨ましい!」と言われましたが、私は結局一度も見に行きませんでした。だって興味なかったんだもん

しかしまあ、とりあえずイタリアと名がつくものにはそれ相応の関心を示してきた私は、自転車競技を一度は見てみてもいいかもしれない、と心のどこかでは思っていたわけです。

 

そんなわけで今回、コロナ禍で前代未聞の暇を持て余していたぐうたらな勉強熱心でイタリアについて少しでも詳しくなるための機会をうかがっていた私は、Youtubeでロードレースでも見るか、という気持ちになったわけです。

するとパッと目に入ったのが、リオオリンピックのロードレース。6時間39分のビデオ。これは最高の暇つぶしになるのではないか勉強のきっかけになると考えた私は、早速見始めたわけです。

 

最初に断っておくと、私が知っていたロードレースに関する情報は、

 

プロ選手に関するもの

・ランス・アームストロングという人がかつてすごかったけどドーピングで自転車競技から永久追放された。

・アームストロングなきあとは、スペインのコンタドールという人がすごかった(らしい)。

 

競技に関するもの

・一人で走るより前に人がいたほうが風よけになって楽。

・個人の勝利はチームの勝利というチームスポーツである。

・序盤からとりあえず逃げ集団と呼ばれる小グループが形成されて、その小グループを大集団が追いかけるのが一般的なレース展開である。

・レースが長いので、走りながらめっちゃ飲み食いする。

 

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これだけです。もしみなさんが自転車競技について何も知らなければ、「へー、そっかぁ。なんかよくわからんなあ」くらいに思うかもしれませんが、自転車競技をほんの少しでも見たことがある人は、このウンコみたいな事前知識にウンコをもらします。「この人何も知らないじゃんブリブリ」状態です

 

さて、リオ五輪のロードレースを見始めた私は、まず、英語実況でちんぷんかんぷんになりました。そもそもの自転車関連用語・表現をよく知らないということもありましたが、なにしろ選手の名前を誰一人知らないので、選手の名前なのか、一般名詞なのか、はたまたなんかよくわからない英単語なのか、もうさっぱりなわけですね。

 

まあ、なんとなくノリで楽しむしかないわけですよ。とりあえず237.5km、山が沢山の山岳コースをみんなでえっちらおっちら走る、ということは分かります。序盤(といってもほんとにわずか)は比較的のんびりみんなで仲良く走るのですが、しばらくすると一人、また一人とグループから勢いよく飛び出しては、集団に吸収されていきます。まあ、流石に私もそこまで無知ではないので、「ああ、この人達は逃げ集団を作りたいんだな」と分かります。

逃げ集団は数名で協力し合いながら走る必要があるので、大集団よりエネルギーを使います。集団も小さいので風などの抵抗も大きいです。それでもなぜ逃げるのか。それはそこにわずかながらの勝利の可能性というロマンがあるからです。あと目立つから

基本的に有力選手は逃げません。疲れるから。だから強くないけど勝ちたい(目立ちたい)という選手が頑張って逃げてみるわけです。*1

 

さてそんなこんなで、数名の逃げ集団が形成されました。6名くらいの集団です。画面の左下には6名の選手の名前が出ます。さっぱりです。でもこういうレースは自分の推しを作って応援すると楽しいです。

というわけで、判官贔屓の私としては、とりあえず逃げ集団全員を応援していたわけですが、その中でもモッフモフのヒゲをたくわえていたサイモン・ゲシュカ選手(ドイツ)に肩入れすることにしました。イタリアの選手がいなかったので、とりあえず外見が目立つゲシュカ!です。ゲシュカ行け!シュートだ!

 

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逃げ集団ができても後ろの大グループ(専門用語でpeloton、ペロトンというみたいです)はなんのその、のんびりだらだら途中下車(は流石にしないけど)の旅です。ペロペロトントンの余裕です。前の逃げ集団がつらそうに一生懸命こぐ→後ろの大集団がのんびり手放し運転→汗を流して一生懸命進む逃げ集団→他国の選手と談笑する大集団、という一見シュールな画面展開となります。

 

さて、そうこうするうちに、すいすい〜っと大集団にバイクが近づき、「今6分くらい前の集団と離れてとるで〜」と、手持ち黒板みたいなもので教えてくれます。前方の逃げ集団にも同じような情報がいきます。

 

私みたいな素人は、「え〜6分も先行されたらもう逃げ集団の勝ちじゃ〜ん」みたいなことを考えますが、大集団は焦りません。やれやれどっこい、みたいな表情をした選手が数名前に出てきて、少しずつペースを上げるくらいです。ここでようやくレース本番です。

 

リオ五輪のロードレースは、山岳に次ぐ山岳。山を何周もする山盛りコースです。しかしそれだけでなく、石畳の上も走ります。石畳の上を40-50kmの猛スピードで走るとどうなるかご存知ですか。辛いんです。もうめっちゃ辛いんです。

いや、それだけでなく、自転車がボヨンボヨンと上下に跳ねるのです。すると何が起きるか。コケる選手が出てきます。コケるとその後ろにいる選手もぶつかってコケます。するとその後ろも、という感じでドミノ倒しのように大の大人がコケまくります。これは本当に危ない。でもさすがプロ選手、コケてもめげずに立ち上がり、すぐに集団を追いかけます。

 

石畳はそれだけではありあません。パンクします。チェーンが外れます。砂ぼこりが舞って前が見えなくなります。自転車につけてある給水用のボトルが吹っ飛びます。その吹っ飛んだボトルにつまずいて後続のライダーが転びます。最悪です。

しかしよく見ると、石畳の横にはアスファルトで舗装されたとても走りやすそうな道があるじゃないですか。でも石畳と舗装路の間にはご丁寧に柵がたてられていて、石畳しか走れないようにしてあります。なぜでしょう。

 

そっちの方がドラマが生まれて面白いからです。

 

これがロードレースです。鬼畜です。しかしさすがプロ。コケてもパンクしても、前のライダーがコケてそれで自分がコケても文句を言いません...と思ったところで、いただきました、本日初の「フ〇〇キュー、気をつけやがれ!」。あまりにもでかい声で叫ぶので放送席まで聞こえてるぅ。

 

さああさあ、白熱してきました。山を登って下っては、石畳を通ってフ〇〇クュー。泣いても笑ってもレースは進みます。

 

実況も盛り上がっています。

 

え?あのファビアン・カンチェラーラが集団を牽引!?(誰?)

ん?あのクリス・フルームがまだ集団で睨みをきかせてる!?(誰?)

 

なんかすごい盛り上がっているところ悪いけど、こっちはサイモン・ゲシュカだからゲシュカにしか興味ないから

 

しかしそうは言ってもロードレースのセオリーは覆すのは大変です。逃げ集団はいつかは大集団に追いつかれるもの。一時は6分あった差も、残り50kmあたりでその差はほとんどなくなります。我らがサイモン・ゲシュカも山岳の上りでおいていかれます。ゲシュカぁああ!

 

このあたりになるとレースも終盤です。大集団が逃げ集団にほぼ近づいてくると、またここからグループが分断していきます。逃げ集団に追いついて一緒に逃げたい選手、機を見て大集団の有力選手を後ろにおいていきたい選手、その思惑はきっとさまざまです。今私は適当なイメージで自転車競技を語っています!よろしくおねがいします!

 

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ていうか、よく考えてみると、大集団を引っ張り続けたのはなんかスペインの選手だし、ちょこちょこ前に出てきて目立つのもコロンビアとかベルギーの選手だし、実況解説も、南アフリカの誰それがうんぬん、イギリスのかれそれがあーだこーだ、オーストラリアのこれそれがそうそう、しか言いません。イタリアどこよ?サイモン・ゲシュカロスを満たすにはイタリア成分が必要です。イタリア国旗を見せたまえよ。

 

そんなこんなでイタリアを待ちわびていた私。レースの山登りもそろそろ残り一周となったところで、ついにその時がおとずれます。最後の山登り手前の下りで、三人のイタリア人選手が大集団から飛び出して圧倒的なスピードでふっとばして、あっという間に先頭に立ちます。

 

ビンチェンツォ・ニーバリ!

ファビオ・アルー!

ダミアーノ・カルーゾ!

 

ふぉぉおおおおおおお!

 

 

だれぇえええええええ?

 

 

だれぇ!?誰だか知らんけどイタリア人だぁああああ!!!

 

実況解説も大盛りあがりです。「下りを利用して、ダウンヒルを得意とするビンチェンツォ・ニーバリがファビオ・アルーと先頭に走り出てきました!ダミアーノ・カルーゾもいるぞ!」

 

イッタリア!イッタリア!イッタリア!私の頭は沸騰しました。もうニーバリ(現イタリアの伝説的ライダー)が誰だか分からないけど、なんか他の二人はニーバリをサポートする走りをしているし、もうこれはニーバリ応援するしかないでしょ!誰だか知らんけど!(現イタリアの伝説的ライダー) ニーバリ!

 

さあ、はじまりました。ショータイムです。大集団にいた優勝候補たちをニーバリの圧倒的ダウンヒル能力を利用して置いてきぼりにしたイタリアチームは圧倒的なスピードで最後の山へ向かいます。

ここでダミアーノ・カルーゾが重要な仕事をします。ニーバリとアルーの前に立ち風よけとなりながらペースを作ります。ニーバリの足を温存するためです。いいぞカルーゾ!カルーゾ!カルーゾ!

そして最後の山登りの入り口で、カルーゾは遅れていきます。His job is done、彼の仕事はここまでです。そうです、自転車競技とはチームスポーツなのです!

 

最後の山登りが始まります。アルーを前にニーバリは黙々と登っていきます。そしてついにその時がきます。

 

ニーバリの山岳アタックです。アタックとはスピードを急激に上げ、後続を突き放すことです。これにくらいつくコロンビアとポーランドの選手!パンタノとマイカ!っていう名前らしい!アタック合戦になります!

このアタック合戦の結果、ニーバリ、パンタノ、マイカは後続を突き放し、下り勝負に入ります。

 

私はここでニンマリです。なぜかって?皆さんお忘れで?ニーバリはダウンヒルのスペシャリストでしたね。下りがめちゃくちゃ得意ということです。このコースでは山を下るとあとは平坦な道が10km続くだけです。ニーバリの勝利は目前です!

 

実況解説も大盛りあがりです。

 

「三人が後ろを見ながら後続の集団を確認しています。集団はかなり離れています。三人はメダルを確実なものにするためにここから協力し合いながら最後まで走りきるでしょう」

「ニーバリ、パンタノ、マイカ、どうやらこの三人でメダルは決まったか!?」

「イタリアはオリンピックでの勝利を渇望しています。ニーバリへの期待は大きいでしょう」

「さあ、ニーバリを先頭に、パンタノ、マイカの最後の下りが始まります!ニーバリが恐ろしい勢いで下っていきます!」

「後ろの状況はどうでしょう。クリス・フルーム(イギリス)が前に追いつこうとしてます。ヴァンアルバマート(ベルギー)もまだ諦めていません。必死の形相で山を登っています」

「さあ、ここで先頭を見て...ああっと!ニーバリが!ニーバリが落車しています!パンタノも落車しています!ニーバリに巻き込まれたか!苦しそうだ!どうやらここでニーバリのレースは終わりのようだぁ!」

「マイカは一人になってしまいました。山を下ってきましたが残り10km最後まで逃げ切れるでしょうか...」

 

 

「スプリント勝負になった!」

 

グレック・ヴァンアルバマートの大勝利!!!!

 

 

 

誰やねええええん*2!イタリア負けとうやないかあああああああい!

 

 

 

 

あああああああい!あい!あい!以上です!!

 

 

*1:自転車競技はチームスポーツなので、もちろんもっといろいろな事情があって逃げ集団というのが形成されるのですが、ここではロマンとだけ言っておきます

*2:クソほど有名な選手