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イタリア語会話に遠過去は必要ない

 

少し怒られそうなタイトルで申し訳ないのですが、イタリア語の時制の一つ「遠過去」は、「会話をする」という目的においてはいらない、ということを言いたいと思います。

 

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有名な話ですが、イタリア語の動詞はいろいろな事情で形を変えます。一般的には「活用」と呼ばれるものです。

どういうときに活用するかというと

①主語が誰なのか(人称)
②主語は一人なのか二人以上なのか(数)
③現在のことなのか過去のことなのか、それとも未来のことなのか(時制)

の基本的には3パターン、動詞の形が変わります*1

イタリア語の勉強を始めた人が、最初に苦労するところであり、永遠に頭を悩まされるのが、この「活用」です。

 

 

さて、この記事では「時制」の話、特に「遠過去」についてお話したいと思います。

イタリア語の動詞は、

①現在
②半過去
③遠過去
④未来

という4つの時制によって、形を変えます。

どれもとても大切なのですが、イタリア語会話のなかではほぼ使うことがないのが「遠過去」です。

 

 

「遠過去」は、簡単に言ってしまえば「現在とは関係のない過去のある時点の出来事について述べる」ときに使うものです。誤解を恐れずに言うならば、「すんごい過去のこと」というイメージです。

 

遠過去の活用を簡単に見てみましょう。ここではamare(アマーレ:愛する)を例に取り上げます。

 

amareの遠過去

  単数 複数
一人称 amai amammo
二人称 amasti amaste
三人称 amò amarono

 

遠過去がよく使われるのは、小説などの文章の中です。ほぼ会話では出てきません。会話ででてくるとしたら、「すんごい過去である」ことをことさらに強調するときがほとんどだと思います。

 

Amavi Marina?

マリナのことを愛していたの?

L'amai!

愛してたよ!(けどもうすんごい前のことで今は関係ないことさ)

 

 

さて、会話で使わないは言っても、遠過去はとても大切な活用のひとつです。
イタリア語入門の本でも、最後の方ではありますが、その説明に一章割かれることが多いです*2

そんなときにたいてい書いてあるのが、遠過去は南の方でよく使いますというものです。

 

当時南イタリアに留学することに決めた私は、「南で使うということは、これは絶対にやらねば!」と意気込んで、覚えようとしました(結局覚えられやしなかったのですが)。

遠過去の勉強にいたるまでに、山のような活用を覚えさせられて、その上遠過去までというのは、本当に骨が折れました(そして私は実際に覚えられませんでした)。

 

しかし、ふたをあけてみると、私の周りにいた人たちは誰も遠過去を使っていなかったのです(当時、勉強のかいなくイタリア語はほぼ全くできませんでしたが、遠過去を使っていなかったことだけはよくわかりました)。

 

 

ただ、会話で遠過去を使っていないということではありませんし、もちろん多くの文法書にかかれているように「南で使う」というのも嘘ではありません。

どういうことかというと、遠過去は、かなりの確率で方言とセットで使われているのです。つまり、例えば、シチリア方言ならその方言と一緒に使われているのです。

 

シチリア方言は、年配の方が使う言語になってきており、シチリアの若者には、理解はできるけれども話せないという人がたくさんいます。年配の方がその方言と一緒に遠過去を使っているのです。

 

さてここで何が言いたいかというと、遠過去の形を覚えていても、シチリア方言がわからなければ意味がないということです。

要は、遠過去を会話で使いこなせるようになるということは、同時にシチリア方言にも造詣が深いということになります。イタリア語初心者にはまず無理でしょう。

 

 

例えば、共通のイタリア語では、「買う」をcomprare(コンプラーレ)といいますが、シチリア方言ではcumprari(クンプラーリ)といいます。だいぶ形が違うんですね。

ですから、実際に会話でcumprariの遠過去形が出てきても、ほぼわかりません。というかまずシチリア方言は語彙も(文法も)かなり違うのでまず何もわかりません*3

 

 

繰り返しになりますが、遠過去形は方言とセットなのです。

共通イタリア語もシチリア方言も話せる私の友人は、シチリア方言のときには遠過去をばんばん使っていましたが、共通イタリア語では一切使っていませんでした。

 

 

ですので、もし会話ができればいいんだという方がいたら、遠過去は思い切って切り捨てましょう。

 

もしだんだん会話ができるようになってきて、ウィットに富んだイタリア語を話したい、なんていう欲が出てきたら、勉強するといいと思います。

 

追記(2020/05/16)

遠過去使わないから、とドヤ顔で記事を書いたあとに、あるイタリア人と話していたら、めちゃくちゃ遠過去使ってました。すみません。「あれ、そんなに遠過去使うの?」「一流のイタリア人はきちんと使い分けますから!」と冗談めかして言われました。ま、最初は無視していいと思う時制であることに間違いはないと思いますが。

 

*1:「法」でも形が変わりますが、簡単に言うと誤解を招きかねないので、ここでは省きます

*2:本当に用途の限られた初心者用のものは除きます。

*3:そういう意味ではシチリア語といったほうがいいのかもしれません。