昔、イタリアに留学していた時に、アダルベルトというルームメイトがいました。シチリア出身の明るい陽気なやつでした
当時の彼の悩みは、お腹がでてきたことでした。特に醜い身体ではありませんでしたが*1、彼はどうしてもダイエットをしたいと言って聞きませんでした
そんな彼は、いくどとなくダイエットにチャレンジし、失敗を繰り返し続けていました
そんな彼が最後に行き着いたのが、お米を食べてダイエットです
イタリア人のソウルフードであるパスタやピザを捨て、お米で暮らしていく。それが、彼のお米を食べてダイエットの全貌です
彼が言うには、
お米はパンより消化によくて、太らない
とのことです
私は、そんなことはよくわからないので、「はい、そうですか」くらいに思って聞き流していましたが、彼のお米への気持ちは日々おさまることをしらず、最終的にこう言ってきました
お米を使った料理を教えてくれないか。それで俺は痩せる。
気づけば、彼の目の前には、山積みにされた5kgのお米があるではないですか。どうやら彼のお米ダイエットの決意はかたかったようです
お米を食べてダイエットは、言い換えると、炭水化物を摂取してダイエットということですから、私には、正統派カリフォルニアロールくらいの感覚でした。ですから、私は、はなからその効果を疑って信じなかったのです
しかし、気づけば、私と彼の目の前には山積みのお米がありました。そこで、これは彼の気持ちを汲んでやらねばならぬ、ということで、チャーハンの作り方を教えてやることにしました。ちなみに、チャーハンはriso cantonese (リーゾカントネーゼ)といいます。直訳すると広東風ご飯です
チャーハンの作り方は大して難しくありませんから、生粋のイタリア人でも作れるだろう、との思いでした。そして、確かに彼は、チャーハンを無事作り上げることができたのです
そのときは、最終的に三合分はあろうかというチャーハンができました。成人男性でもそれだけで2日くらい生きていけそうな量のチャーハンです
彼は大満足でした。嬉しそうに頬張り、1.5人前くらい食べたところで、無事お腹いっぱいとあいなり、彼は言いました
もうお腹いっぱいだ、これ以上は食べられない。残りは明日食べることにするよ
私は、満足そうにソファでお腹をなでるルームメートを見て、自分の考えを改めざるを得ないと感じました。彼は普段は250グラムのパスタをペロリですから、それと比べると圧倒的に少ない量で彼は満足したのです
私は、これを、「イタリア式お米ダイエット」と名付けることにしました
私は思ったのです。時代はお米。イタリア人がソウルフードを捨て、お米へと歩を進める時代がきたんだ、と。イタリアに新たな潮流が来ていることを肌で感じました
時代が移り変わる瞬間に立ち会っている、そんな気が、確かにしたのです
さて、そんな革命的な出来事から2時間後、彼はおもむろにソファから立ち上がり、言いました
少しお腹が減ったぞ、もう少しだけお米をいただこう。
そう言うと、彼は、ものの30分で、残りのチャーハンをすべて平らげたのでした
そして、彼は言いました
やっぱりお米だけだとお腹が減るや。パンを食べよう。
そして、彼はこう付け加えました。
お米だとだめだ。逆にたくさん食べてしまう。残ったお米、全部あげるよ。僕はやっぱりイタリア人だ
ということで、ルームメイトのイタリア式お米ダイエットはものの半日で幕を閉じたのでした
おしまい
追記 過去にアダルベルトくんをもとに、イタリア人は浮気性かどうか考察しました
追追記 こんな友達もいました。
*1:いや、むしろガタイがいいと言ったほうがいいくらいの普通のナイスバディだった